日本は、2010年7月から2011年8月にかけてベラルーシ共和国国境警備委員会との協力により、同国国境における核・放射性物質の不法移転防止システムの近代化を目的とした機材供与等の協力を行いました(総額約76百万円相当)。
<協力の背景>
欧州東部に位置するベラルーシ共和国は、ロシア、ウクライナ、ポーランド等5ヵ国に囲まれた内陸国であり、EU とロシアを繋ぐ交易上の接点にありますが、国境検問所で高い放射線が検知される貨物が増大しており、対応の迅速化が課題となっていました。また、ベラルーシは1986年のチェルノブイリ原発事故によって国土の5分の1以上が放射能によって汚染され、隣国ウクライナと国境を接する汚染地帯からの汚染物の持ち出しも後を絶たず、国境地帯における検知・対応能力の強化が求められていました。
国境検問所 | チェルノブイリ原発事故汚染地域への入り口 |
<検知・対応能力の強化>
本件協力においては、国境検問所等で高い放射線が検知された際に現場に急行して放射性核種の特定等の任務にあたる管理対応移動ラボ(分析車両)3台を供与しました。また、この移動ラボが現場で測定したデータを本部に送信し、本部や外部専門機関と連携して迅速な対応決定を行うための放射線管理位置情報システムを構築したほか、国内に34ヶ所ある簡易検問所やグリーン・ボーダー(無人国境地帯)の監視等のために最新型の放射線検知器を供与しました。
本プロジェクト完了後、約1年半の間に、これらの機材を使用して約29万件の車両・貨物列車等の検査が実施されています。
放射線測定機器 |
放射線管理位置情報システム |
車両・貨物の検査 |
<国境警備職員の技能向上>
上記機材の供与に加え、核不法移転対策における国境警備職員の専門技能向上のため、国境警備大学内に放射線管理専門教室を整備しました。本教室は、同大学の講義等の他、国内外関係機関による各種セミナーにおいても使用されています。
放射線管理専門教室 |